STORY
首無し乙女は万事快調と笑う
もう彼女はマフラーを巻かない。それが、どんなに体を温めても。もう彼女はネックスレスを付けない。それが、どんなにお気に入りでも。
何故なら彼女には、それを纏うための首が無いから。
ナチス政権下のドイツ。とある独裁者のご乱心により、差別や弾圧が丸の内OLの女子会並みにカジュアルに行われていた時代。
極限状態の飢えとチフスで生死の境を彷徨っていたユダヤ人の女性エマ・ミーゼス(小岩崎小恵)を救うべく天才科学者オスカー・アルベンハイム(加藤慎吾)が施したのは、死にかけた肉体から頭を切り離し、それを生命維持装置に直接繋ぐという前人未踏の大手術であった。こうして異形の姿で蘇ったエマは持ち前の明るさを武器に、幸せだった日々を、恋人を、家族を取り戻そうと奮闘する。
……やがて現れた隻眼の将校ハインツ・フーベルト(谷口賢志)が彼女をいざなうのは悪夢に似た天国か、それとも幸福に満ちた地獄か。
劇団史上最もアバンギャルドな傑作長篇が、装いも新たに蘇る。
漂流ラクダよ、また会おう
サジタリウス星系からやってきた奇妙な知的生命体(通称、漂流者)と人類が接触して十年が経過した。
しかし、彼らの話す内容は極めて抽象的かつ哲学的であり、
誰一人として、その真意を理解できる者はいない。
友好目的なのか、それとも侵略目的なのか。
もし後者だとしたら、どうして攻撃してこないのか……人類は頭を抱えていた。
『物語は人生と同じように、民族を越え、歴史を越え、文化を越えて存在するのだ』
このフランスの哲学者ロラン・バルトの言葉を引用し、
物語の交換を試みてはどうかと人類は考えた。
我々の物語を彼らに教え、同時に彼らの物語を教わるのだ。
それにより、互いの理解は劇的に深まるのでは、と。
やがて一人の著名な小説家(NPO法人)が選ばれ、人類初の地球外生命との物語の交換が始まった。
……これは彼と漂流者が交換した、数々の物語を繋ぎ合わせた珠玉の短篇集である。
物語の果て、全ての【点】は【線】となる。